大潟村は「湿地性里山」
大潟村は昭和39年に発足し、すでに45年以上が経過しました。かつての八郎潟の湖底に水田や用水路、排水路、道路、防災林、公園などが整備されてきましたが、大潟村の自然環境についても、独自に、豊かに育まれています。その大潟村の自然環境の大きな特徴は、田畑を含めた「湿地性里山」環境にあります。
湿地とは、海水や淡水で土地が冠水したり、あるいは一定期間冠水したりする低地のことです。湿原や湖、沼、干潟などが代表的な湿地として広く知られていますが、広義には水田やため池なども含まれます。里山とは、集落に隣接して、人間の出入りがあり人間の影響を受けた生態系が確立している山林や田畑のことをいいます。周囲を調整池や承水路で囲まれ、干拓地内には広大な水田が広がり、またヨシ原や防災林が広がる大潟村は、湿地の特徴と里山の特徴を併せ持った「湿地性里山」環境なのです。生き物が生息する「湿地性里山」の面積は、農地、用排水路、大潟草原鳥獣保護区、防災林地をあわせ、干拓地の95%にも達しています。
大潟村の「湿地性里山」環境の様子は、以下のとおりです。
大潟村の水田
大潟村の麦畑
大潟村の大豆畑
八郎潟調整池
西部承水路とヨシ原
幹線排水路
防災林
大潟村の生態系
(1)生態系とは
生態系とは、一定の地域に存在する生物と、それを取り巻く環境をひとつのまとまりとしたものです。生態系を構成する生物は、生産者・消費者・分解者に分けられます。生産者は、太陽の光を利用して光合成を行う植物が中心です。消費者は動物が中心で、生産者を食べるなどして利用します。また、消費者を捕まえて食べてしまう消費者もいます。分解者は主に微生物で、生産者や消費者の遺体や排泄物を分解されます。生態系では、生産者・消費者・分解者が密接に関わりあっており、生態系ピラミッドを構成しています。また、生態系を構成する生物は、互いに食う-食われるの関係にあります。この関係を「食物連鎖」といいます。
(2)大潟村の生態系
大潟村の生態系は、水田に散布されている農薬が少ないこと、水田だけでなくヨシ原や防災林、承水路などの様々な環境があるため、たくさんの種類の生物が生息していることが大きな特徴です。ここでは、生態系を構成している生物である「生産者」「消費者」「分解者」に分けて、大潟村の生態系の特徴を紹介します。
(1)生産者
生産者である植物は、太陽からの光エネルギーを吸収して光合成を行い、無機物から有機物(糖やデンプン)を作ります。有機物は、植物の体に蓄積されます。この過程では、二酸化炭素を大気から吸収し、酸素が大気中に排出されます。
大潟村における生産者の例は、次のとおりです。
- 農地
- 稲、麦、大豆など
- 湿地
- ヨシ、マコモ、ガマなど
- 湖沼
- ハス、ヒシなど
稲
麦
大豆
西部承水路沿いのヨシ原とハス
(2)消費者
消費者は、生産者が有機物を食べる動物のことです。消費者は草食動物のように植物を直接食べる「第1次消費者」、草食動物を食べる肉食動物を「第2次消費者」、第2次消費者を食べる「第3次消費者」、第3次消費者を食べる「最高次消費者」に分けられます。
大潟村における消費者の例は次のとおりです。大潟村において、最高次の消費者は猛禽類になります。
第1次消費者
- 草食性昆虫
- イナゴ、イネゾウムシ、ガムシなど
- 草食性鳥類
- ハト、スズメなど
イナゴ
ガムシ
スズメ
第2次消費者
- 雑食性魚類
- フナ、コイ、ドジョウ、モツゴ、タナゴなど
- 肉食性昆虫
- アキアカネ、ギンヤンマなど
- 雑食性昆虫
- コオロギ、ゲンゴロウなど
- 雑食性甲殻類
- アメリカザリガニ、スジエビなど
モツゴ
タイリクバラタナゴ
アキアカネ
ギンヤンマ
スジエビ
第3次消費者
- 哺乳類
- イタチ、キツネなど
- 雑食性鳥類
- ガンカモ科、キジ科、ヒバリ科、ムクドリ科の鳥類
- 魚類
- オオクチバス、カムルチー(ライギョ)など
- 両生類・は虫類
- ニホンアマガエル、トノサマガエル、カナヘビなど
イタチ
ガン類
オオクチバス
最高次消費者
- 鳥類(猛禽類)
- チュウヒ、オオタカ、サシバ、ノスリなど
チュウヒ
(3)分解者
ミミズや線虫などの土壌動物、及び菌類や細菌類の微生物は、枯死した植物、動物の排泄物や遺体などを分解して無機物にしてしまいます。分解者によって分解された無機物は、再び生産者に利用されます。 大潟村における分解者の例は以下のとおりです。
- 分解者
- ミミズ、線虫、ダンゴムシ、菌類など