私たちの暮らしている地球は、温暖化をはじめ数多くの環境問題を抱えています。国境を越えて広がる環境問題の改善は、地域の改善策が一番大切です。その考え方に基づき「自治体のすべての部門を環境の視点から改革し、まちづくりのあり方を地球環境の持続可能性の視点から検討する」ことを基盤とした自治体づくりを進めるネットワーク組織として、1992年、環境自治体会議が設立されました。同年5月、北海道池田町での第1回環境自治体会議を皮切りに、原則毎年5月に「環境自治体会議」という名称で全国大会を開催しています。1996年からは常設の事務局を設置。事務局は自治体からの出向者ではなく、ボランティアのスタッフによって運営されています。
また、「環境自治体」とは、「自治体のすべての政策分野で環境優先の考え方を取り入れ、地域において環境の視点に立ってまちづくりを推進し、同時に自らの活動(事務事業)において環境配慮を実現しようとする自治体」のことを指します。環境自治体会議では、この「環境自治体」の必要条件として、次の3つの要素を提案しています。
環境自治体会議は、この「環境自治体」の理念・考え方を広め、全国すべての自治体が「環境自治体」になることを目指しています。
LAS-Eとは、環境配慮や環境政策に取り組むためのしくみを自治体が確立運用し、その取り組み内容が環境自治体としてふさわしいかどうかをチェックするための基準です。
LAS-Eには、「1) 環境自治体会議とは」で述べた環境自治体づくりの3要素に対応させて、エコアクション(環境活動)部門、エコマネジメント(環境経営)部門、エコガバナンス(環境自治)部門の3つの部門が設けられています。また、部門ごとに環境自治体づくりの熟度に応じ、第1ステージ、第2ステージ、第3ステージの3つの区分に分けられています。
LAS-Eに沿った取り組みを実施し、合否判定を受ける場合、まずどの部門のどのステージに挑戦するかを検討し、LAS-E事務局へ申請します。
部門 | ステージ(→ハイレベル) | ||
---|---|---|---|
第1ステージ | 第2ステージ | 第3ステージ | |
エコアクション部門 (環境環境) 環境問題解決や地域の持続可能な発展のために必要な対策が行われている。 |
庁内事務活動における環境配慮 | 事業活動における環境配慮、地域全体の環境政策実施 | 持続可能な地域づくり(環境・経済・社会の調和)政策 |
(10 項目中、7項目以上で実施) | (10 項目中、7項目以上で実施) | 未定 | |
エコマネジメント部門 (環境経営) 環境に関する総合的で効率的な行政運営や政策立案が行われている。 |
環境を意識した行政運営(環境に配慮した職員意識の醸成) | 総合的・体系的な行政運営(計画づくりとフォローアップ) | 戦略的アセスメントの考え方に基づ行政運営(施策の効果や優先度を客観的に判断) |
(10 項目中、7項目以上で実施) | (10 項目中、7項目以上で実施) | 未定 | |
エコガバナンス部門 (環境自治) 村民・事業者とのパートナーシップによる事業の実施や政策決定が行われている。 |
政策・事業内容やその検討・実施プロセスの公開 | 政策や事業の立案・実施プロセスへの市民参加 | 村民・事業所との協働または市民主導による政策決定・政策実施 |
(5項目中、7項目以上で実施) | (8 項目中、6項目以上で実施) | 未定 |
LAS-E では、各部門・ステージごとに、すべての取り組み自治体が共通して取り組むべき環境政策の内容、行政運営のしくみ、住民参加の方法などについての内容を示していますが、これを「共通実施項目」といいます。共通実施項目では、そのステージにおいて、環境自治体として最低限取り組むべき思考を提示しています。原則として、取り組みの定量的な計測を必要とせず、その取り組みを実施しているか否かで判断できる性質のものから構成します。例えば、エコアクション部門・第1ステージは、10項目からなっており、このうち7 以上の項目を実施しなければなりませんが、各項目の具体的な実施方法については、取り組む自治体が独自に決定するものとしております。
また、これらの共通実施項目の中に「独自目標を定める」といった必須項目がはいっています。これは、地域特性、行政組織や政策の現状、民間の環境保全活動、村民・事業者の意識などの実態に即して定める重点的あるいは個性的な目標であり、できる限り数値化または定量的な表現をとるものとしています。
部門 | No. | 内容 | 取組の有無 |
---|---|---|---|
エコアクション部門 (環境活動) |
A101 | 本庁舎や分庁舎におけるオフィス活動における省エネ・省資源、リサイクル、グリーン購入などを実施するとともに、関係法令を遵守している。 | ○ |
A102 | 学校、保育園など教育部門での省エネ・省資源、リサイクル、グリーン購入などを実施するとともに、関係法令を遵守している。 | ||
A103 | 公民館、図書館、市民会館など、市民利用施設での省エネ・省資源、リサイクル、グリーン購入などを実施するとともに、関係法令を遵守している。 | ○ | |
A104 | 病院、保健所、高齢者福祉施設など、医療福祉部門での省エネ・省資源、廃棄物削減、リサイクル、自然エネルギー利用、グリーン購入などを実施するとともに、関係法令を遵守している。 | ○ | |
A105 | 消防庁舎、上下水道施設、清掃工場、給食センターなど供給処理施設の事務部門での省エネ・省資源、廃棄物削減、リサイクル、自然エネルギー利用、グリーン購入などを実施するとともに、関係法令を遵守している。 | × | |
A106 | 公用車利用による環境影響の抑制(職員の勤務中の公用車利用の抑制、低公害者の導入や自転車の利用など)を実施している。 | ○ | |
A107 | 職員の通勤時の直接的環境影響の低減(マイカー使用の抑制、公共輸送機関や自転車の使用など)を実施している。 | ○ | |
A108 | 庁舎・施設内に常在する者(都道府県所属の教職員、施設管理者、食堂、売店スタッフ等)への環境配慮の要請を実施している。 | ○ | |
A109 | 庁舎・施設へ出入りする事業者への環境配慮の協力要請を行っている。 | ○ | |
A110 | A101~A109の取り組みに関連する独自の数値目標を、5つ以上設置している(必須項目) | ○ | |
エコマネジメント部門 (環境経営) |
B101 | 環境面での取り組みの基本方針を定めており、職員がそれを認識・理解している。 | ○ |
B102 | 事務活動に伴う環境への影響の内容を把握し、職員がこれを認識・理解している。 | ○ | |
B103 | 組織や職員が環境に関する目標(独自目標)について、認識・理解している。 | ○ | |
B104 | 環境への取り組みに関する組織体制・責任体制が明確になっており、職員が組織上の役割を認識・理解している。 | ○ | |
B105 | 庁内事務活動の環境への取り組みに関する部門間の協議組織が設置されており、これが定期的に開催されている。 | ○ | |
B106 | すべての職員が環境に関する教育を定期的に受けている。 | ○ | |
B107 | 首長と環境に関する協議組織が、環境マネジメントシステムに関することや環境政策全般について定期的に協議している。 | ○ | |
B108 | 事務活動に伴う環境負荷の発生量(エネルギーや水・紙の消費量、ごみの排出量など)を定量的・定期的に把握している。 | ○ | |
B109 | 職員または部門単位で環境配慮行動(省エネ、廃棄物削減など)の実施状況を定期的に把握している。 | ○ | |
B110 | B101~B109の取り組みに関連する独自の数値目標を、1つ以上設置している。(必須項目) | ○ | |
エコガバナンス部門 (環境自治) |
C101 | 環境に関する取り組みの基本方針または宣言について一般に公開・提供している。 | ○ |
C102 | 環境に関する目標の達成状況に関する情報を定期的に公開・提供している。 | ○ | |
C103 | 環境に関連する計画(環境基本計画、都市計画マスタープラン、緑の基本計画、ごみ処理基本計画など)の内容を公開・提供している。 | ○ | |
C104 | 環境に関連する計画(環境基本計画、都市計画マスタープラン、緑の基本計画、ごみ処理基本計画など)の策定・運用にあたり、途中経過を率先して提供している。 | ○ | |
C105 | 環境を保全・改善する事業(公園・緑地整備、水辺整備など)について、その内容を公開・提供するしくみがある、 | ○ | |
C106 | 環境にマイナスの影響のある事業(道路建設、ごみ処分場建設、宅地造成など)について、その内容を公開・提供するしくみがある。 | ○ | |
C107 | C101~C109の取り組みに関連する独自の数値目標を、1つ以上設置している。(必須項目) | ○ |
LAS-Eに取り組む自治体は、システムを運用するために、権限と責任が明確になった推進組織を設置しなければなりません。通常はシステム全体を取り仕切る権限を持った推進本部が置かれ、その責任者に首長や副市町村長が就きます。推進本部は共通実施項目の具体的取り組み方法や目標を決定し、各実行部門(課や施設単位で設定されます)からの実施状況の報告に対し、是正措置の指示を行います。
また、推進本部の下には通常、環境マネージャー会議などが置かれ、具体的な取り組み方法や目標の原案を検討したり、後に述べる環境監査に参加したりします。自治体にすべての職員は、研修を少なくとも年1 回以上受けなければなりませんが、研修講師の派遣などを、LAS-E事務局に依頼することができます。
LAS-Eに取り組み自治体は、目標審議組織をつくらなければなりません。目標審議組織は、村民・事業者・外部専門家及び行政の各部局の代表などから構成されますが、半数以上は外部の人間でなければなりません。目標審議組織は、独自目標の項目や目標値を定めます。独自目標以外の項目の具体的な実施方法についての意見を述べることもできます。目標審議委員は、新たに設けることも、監査組織が兼ねることもできますが、環境審議会などの既存組織を活用することも可能です。
目標設定と同様に、LAS-Eでは、村民・事業者・外部専門家及び行政組織の各部局の代表から構成される監査組織を設置します。監査組織も半数以上が外部の人間でなくてはなりません。環境監査では、共通実施項目に関する取り組みの実施状況や、独自目標の達成状況ついて検証しなければならないことになっています。
共通実施項目については、取り組みが3ヶ月以上行われた後に、監査チェックシートに基づいて監査を行い、被監査組織への監査結果の報告または是正勧告を行います。 また、監査員は監査の前に監査方法に関しての研修を必ず受けなければなりません。研修の講師はLAS-E事務局に派遣を依頼することができます。
環境監査の結果、取り組みが申請基準に示す内容を満たしていると判断した場合は、LAS-E事務局に対し、合否判定の申請をします。合否の判定とは、申請自治体の環境に関する取り組みがLAS-Eに準拠しているかどうか、また当該自治体の監査組織により適正な監査が行われたかどうかを、提出書類に基づき判定するものです。合否の判定は、LAS-E事務局とは独立した、自治体政策及び環境監査の専門家からなるLAS-E判定委員会が行います。LAS-E判定委員会から合格との判断がなされた場合は、LAS-E事務局から合格証が申請自治体に送付されます。